こんにちは。名古屋・金山の社労士法人TRiUMPHです。
年末が迫ってきました。この時期になると、人事労務担当者の方は、「今年の年末調整どうしよう・・・」と頭を悩ませていらっしゃるのではないでしょうか。毎年毎年、紙の山にまみれていた年末調整にも、ついに電子化の風が吹きこみ始めました。給与計算システム、税務・労務の電子申請システムを手掛ける各社が、こぞって電子版年末調整システムをリリースし始めています。でも、「どこまでできて、何が便利なのか、見当がつかない・・・」そんな人事労務担当者の方に朗報です。年末調整が電子化されると、年末調整の作業はほとんど全て、パソコン・スマホを使って、紙ベースの作業よりも早く正確に行うことができるのです。今回は、年末調整の電子化・電子申請について、参考になる情報のリンク先も含めてお伝えしようと思います。
STEP① 1年間の給与決定
12月の給与計算が終了すると、1月から12月に支払う給与と、控除する税額が決定されます。給与計算ソフトを導入していれば、ここは既に電子化されているかと思います。
STEP② 控除計算
毎年、各種控除を計算するために従業員に記入してもらっていたマルフ、マルホなど、紙の煩雑な書類群。電子化すると、各種所得控除や税額控除(住宅ローンなど)の書類の従業員による記入は、WEBアンケート方式になります。下記のリンク先では、国税局が作った年末調整システムの使い方を、動画で解説しています。市販の年末調整システムについても、ここは似たようなつくりかと思います。
<Youtube:国税庁動画チャンネル:年調ソフトの使い方~電子化で効率化~>
www.youtube.com
生命保険等の保険料控除証明書は、ハガキで郵送されて来たものを年末調整システムに手入力する場合と、電子化された証明書をダウンロードし、年末調整システムにインポートする場合があります。電子化された証明書を年末調整システムにインポートした場合、入力が正確になるだけではなく、計算まで正確になります。
<国税局:控除証明書等の電子的交付について>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/koujyo.htm
電子化された証明書はマイナポータルからダウンロードする方法と、各保険会社のいわゆる「お客様ページ」からダウンロードする方法があります。マイナポータルには、かんぽ、JA、日本生命等、国内の主な保険会社が証明書の電子データを提供しており、ダウンロードすることが可能です。
<国税局:マイナポータル連携可能な控除証明書等発行主体一覧>
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/list.htm
外資系生命保険は、現段階では、基本的には対応していないようです。アフラックはマイナポータル対応済み、メットライフは、お客様ページからダウンロードすることが可能、アクサ生命やジブラルタ生命などは未対応のようです。
<メットライフ生命:控除証明書の電子発行について>
https://www.metlife.co.jp/customer/subtraction/digitization/
マイナポータルから電子化された保険料控除証明書をダウンロードするには、マイナンバーカードの取得、マイナポータルの利用者登録をすることが必要です。
<Youtube:国税庁動画チャンネル:マイナポータル連携で年末調整手続を簡便化!>
www.youtube.com
STEP③ 年税額の決定
出そろった各種所得控除、税額控除等をもとに、年税額を計算します。そして、多くの場合は12月の給与に、年末調整の調整金を計上します。
年末調整システムと給与ソフトが連携している場合、年税額・調整金の自動計算が可能になってきます。例えば、代表的な給与計算システム・年末調整システムのひとつである、マネーフォワード給与とマネーフォワード年末調整などは、相互に連携することが可能なようです。
<マネーフォワード:クラウド年末調整の主な機能>
https://biz.moneyforward.com/tax-adjustment/feature/
また、その他の市販の年末調整システムでは、API連携していなくても、CSVデータ取込み機能などで、給与計算システムと年末調整システムを連携することは可能と思われます。ちなみに、国税局の作った年末調整システムは、控除データの吐出しはXML形式なので、CSVデータによる連携はできません。
STEP④ 法定調書を税務署に提出
年が明けると、1月末までに法定調書を税務署に提出しなくてはなりません。こちらも、「e-Tax」から電子申請が可能です。
<国税電子申告・納税システム「e-Tax」>
https://www.e-tax.nta.go.jp/
新規利用者登録には企業の代表者等のマイナンバーカードが必要です。従来は、利用にはカードリーダーが必要でしたが、マイナポータル連携によりスマホでの認証ができるようになりました。
<Youtube:国税局動画チャンネル:e-Taxソフト(WEB版)をご利用の方へ【90秒ver】>
www.youtube.com
一部の年末調整システムはe-TaxとのAPI連携が可能ですが、その他市販の年末調整システムはCSV形式による連携と思われます。
STEP⑤ 給与支払報告書を各市町村に提出
各市町村に提出する給与支払報告書も、1月末までに整えなくてはなりません。例年紙で送付して、手間と郵送代がかさんでいたこの作業も、「eLTAX」により電子申請が可能です。
<地方税ポータルシステム「eLTAX」>
https://www.eltax.lta.go.jp/
<Youtube:eLTAX 地方税ポータルシステム:給与支払報告書の電子的提出の一元化(概要編)>
www.youtube.com
利用には利用者登録が必要です。代表者等のマイナンバーカード、カードリーダーは必要ありません。年末調整システムとは、一部の年末調整システムではAPI形式、多くの年末調整システムはCSV形式での連携が可能です。
<eLTAX:CSVファイル取り込みによる給与支払報告書の作成でエラーとなった場合の対処等について>
https://www.eltax.lta.go.jp/news/03046
給与支払報告書を電子申請すると、各市町村からの住民税のデータも、電子データで返ってくるようになります。紙と電子データ、両方でもらうことも可能です。給与計算ソフトにいちいち手打ちしなくてもいいという点で、地味に便利になりますよね。
終わりに
マイナポータル、e-Tax、eLTAX各システムは、一度利用者登録をしてしまえば、あとはIDとパスワード等を覚えておくだけで、来年以降も利用できます。始めるときの登録作業は大変ですが、来年以降は登録作業が必要なくなり、より便利に使えるようになります。また、来年以降も、市販の年末調整システムベンダーは、行政機関システムとのCSV連携等だけでなく、いろいろな便利な新機能を発表してくるものと思われます。そうなれば、ますます年末調整が早く、正確にできるようになります。
年末調整にようやく吹き込み始めた電子化の風。この追い風を受けて、どんどん年末調整業務を効率化していきましょう。分からないことがあれば、税務・労務の電子化に明るい税理士・社会保険労務士等の専門家に相談してみるのも一つの選択肢です。
それではまた。名古屋・金山の社労士法人TRiUMPHでした。