名古屋金山- 労務トライアンフ

このブログは、社労士法人TRiUMPHの活動内容や労務管理のポイントなどを情報発信するブログです。本ブログは、名古屋市にある社労士法人TRiUMPHによる運営です!

法定三帳簿について - 労務管理上、備えておかなければならない書類とは?

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労使協定書や定期健康診断の結果、従業員が常時10人以上の場合には就業規則など、労務管理上、企業が保存しておかなくてはならない書類は多くあります。今回はその中の「法定三帳簿」について解説します。

法定三帳簿とは

「法定三帳簿」とは、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿等」の三帳簿の総称です。労務管理を適切に行うためには必須であり、企業規模にかかわらず作成・保管が義務づけられています。

 

  • 労働者名簿

労働者名簿とは、従業員(日々雇用は除く)を採用した際に従業員の氏名・雇入年月日等を記載する書類です。労働者名簿は1人1枚作成され、内容に変更があった場合には都度改訂が必要です。

 

◇様式

労働基準法施行規則 様式第19号(第53条関係) ※1

下記記載事項が網羅されていれば、任意の様式で作成することも可能

◇記載事項

氏名 生年月日 履歴 性別 住所 雇入の年月日

退職・解雇・死亡の年月日およびその理由

従事する業務の種類(従業員が30人以上の場合に限る)

◇保存期間

労働者の死亡、退職又は解雇の日から5年間(当分の間、3年間)

 

労働者名簿は、有給休暇の付与日数の確認や通勤手当の計算時の経路確認に使用するほか、雇用関係の助成金を申請する際の労働者の情報提示の際に使用することもあります。

労働者名簿に記載する内容は個人情報に当たるため、個人情報保護法の対象となることも覚えておきましょう。

 

  • 賃金台帳

賃金台帳とは、従業員への給与の支払い状況を記載する書類です。労働者名簿とは異なり、日々雇用を含むすべての従業員について作成する必要があります。

 

◇様式

労働基準法施行規則 様式第20号(第55条関係) ※2

下記記載事項が網羅されていれば、任意の様式で作成することも可能

◇記載事項

氏名 性別 賃金の計算期間 労働日数 労働時間数

時間外労働時間数 深夜労働時間数 休日労働時間数

基本給や手当の種類及びその額 賃金の控除項目及びその額

◇保存期間

労働者の最後の賃金について記入した日から5年間(当分の間、3年間)

賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合、源泉徴収簿の保存期間が7年のため、7年間

 

“給与の支払い状況を記載”ということで給与明細と混同しがちですが、賃金台帳は賃金の計算期間や労働時間数等の記載がされていることで、従業員に支払った賃金の根拠を示す資料となります。

 

  • 出勤簿等

出勤簿等とは、従業員の労働時間を把握するための書類です。賃金台帳と同様、すべての従業人について作成する必要があります。

 

◇様式

             任意

◇記載事項

氏名 労働日数 出勤日 労働時間数

時間外労働を行った日付と時刻・時間数

休日労働を行った日付と時刻・時間数

深夜労働を行った日付と時刻・時間数

◇保存期間

従業員の最後の出勤日から5年間(当分の間、3年間)

             

出勤簿のデータは従業員に適切な給与を支払うために必須の資料といえます。また、企業には、従業員の長時間労働の防止などを目的として、労働時間を適正に把握する義務があり、把握方法についても、自己申告制の労働時間の記録では適切な労働時間の管理が難しいことから“客観的な記録が基礎となる方法”と定められています。出勤簿を適切に作成・保存することで、適切な労務管理に役立てましょう。

 

各種帳票の保存期間については、2020年4月の法改正に伴い、3年から5年に延長されています。経過措置として当分の間は3年とされていますが、今後に備えて5年保管することが望ましいでしょう。 ※3

 

法定三帳簿を作成・保存していない場合

事業主には法定三帳簿の作成・保存を行うことが労働基準法で義務付けられており、違反した場合は同法120条により30万円以下の罰金が課せられます。

現実的には即罰則適用というものではなく、作成・保存をしていなかった場合、まずは労働基準監督署からの指導が入ることが多く、その指導にも従わない等、事業主の行為が悪質な場合に罰則が適用されることになります。

指導が入るケースとしては、

・帳簿を作成していない ・帳簿の作成はしているが保存期間が順守されていない

・情報が古く、更新がされていない ・虚偽の記載をしている

などが考えられます。帳簿を正しく作成することはもちろん、作成後は必要に応じたメンテナンスを行うことを心がけましょう。

 

まとめ

従来、これらの三帳簿について紙ベースでの保管が主流でした。しかし、画面での表示・印刷が可能であることや労基署の臨検時等の際に直ちに必要事項を明らかにすることができて写しを提出できること等の要件を満たせば、各帳簿、電子データで保存することが認められています。

紙媒体での保存だと紛失や災害時の消失のリスクも懸念されます。また、働き方改革が進み、テレワークなどのリモートでの働き方を取り入れる企業も増えてきています。“データの紛失・消失のリスクが低いこと”“データをいつでもどこでも確認することができること”は、各種帳簿の電子化は企業にとっても従業員にとっても双方メリットがあるといえるでしょう。帳簿類の電子化について、なにから始めたらいいかわからないという方は、お気軽に社会保険労務士までお問い合わせください。

 

※1 ※2

主要様式ダウンロードコーナー【厚生労働省】

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/

※3

労働基準法の一部を改正する法律について【厚生労働省】

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00037.html

育休復帰の壁を乗り越える!子の看護休暇の時間単位取得について

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こんにちは。名古屋・金山の社労士法人TRiUMPHです。

「育休から復帰してほしい社員がいるけど、子育てと仕事の両立は大変そう。どう支援していいのか分からない!」というお悩みをお抱えではありませんか?そんなお悩みに効く法改正が今年ありました。子の看護休暇を、1時間単位でとることができるようになったのです!

そもそも「子の看護休暇」とは?

ざっくり言うと、子どもが病気になった時に、有給休暇とは別に、休暇を取れる制度のことです。子どもの予防接種や健康診断にも使えます。有給休暇とは全く別の制度なので、子の看護休暇をとれば有給休暇は減りません。小学校に通う前の子ども一人につき1年に5日(子どもが2人以上の場合は10日)とることができます。

子の看護休暇をとった時間についてお給料が発生するかどうかは、会社の就業規則などによります。つまり、法的には、会社はかならずしもお給料を支払う必要はないということです。ただし、会社は子の看護休暇をとったからといって、労働者に不利になるようなことはしてはいけません。

 

子の看護休暇は1時間単位でとることができる!

育休から仕復帰した以上、仕事に責任が発生するのも事実です。休めない、休みたくない場合だってあるでしょう。そんな時に助けになるのが、「子の看護休暇の時間単位取得」です。

2021年1月の法改正により、子の看護休暇を1時間単位でとることができるようになりました。例えばこんなことができます。

突然子どもが熱を出した!どうしても外せない仕事がある。病院に連れていき診察を受けさせて病児保育に預けるまで、ある程度時間が必要。9時始業には間に合わない。でも、10時ごろからなら仕事に出られそう。

  • 昨年(法改正前)まで →             半日単位でしか子の看護休暇を取得できない
  • 今年から(法改正後) →             1時間分の子の看護休暇を取得できる

ちなみに、子の看護休暇を15分単位、30分単位などでとれるかどうかは、その会社の就業規則などによります。これは、分単位の子の看護休暇制度が、時間単位の制度よりも労働者に有利な制度であるためです。

また、所定労働時間が1日4時間以下の労働者は、子の看護休暇を取得できませんでしたが、今年からできるようになりました。

ただし、会社は、労使協定で定めることにより、以下の一定の労働者を除外することができます。

  • 勤続6ヶ月未満の労働者
  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 時間単位で子の看護休暇又は介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者

 

就業規則との関係・・・義務化されたの?

会社は就業規則などに、子の看護休暇の時間単位取得の制度を定めておくことは、非常に望ましいです。今のところ、必ずこの制度を定めておかなければならない、というわけではありませんが、早く定めたほうがいいでしょう。なぜなら、労働者が法的に間違っていない子の看護休暇をとりたいと申し出をした時に、会社側は断れないからです。労働者が気持ちよく働けるよう、就業規則を整備しましょう。

では、どんな就業規則にしたらよろしいでしょうか。厚生労働省のホームページにモデル就業規則があるので、ご参考になさってください。また、社会保険労務士へのご相談も検討してもよろしいでしょう。

育児・介護休業等に関する規則の規定例(厚生労働省) 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html

両立立支援等助成金との関係

子の看護休暇を時間単位、かつ有給でとれるようにすると、助成金がもらえる可能性が出てきます。「両立立支援等助成金育児休業等支援コース(職場復帰後支援)という名前です。

この助成金をもらうのに必要な条件は、

  • 中小企業であること
  • 時間単位の子の看護休暇制度を就業規則などに定めること
  • 子の看護休暇が有給であること
  • 雇用保険に入っている労働者が、育休から復帰した後6か月以内に、10時間以上、時間単位の子の看護休暇を取得すること

などです。

他にもいろいろと細かい条件があります。

貰える金額は、

  • 28.5万円(就業規則などを整備したとき)
  • 子の看護休暇により休んだ時間の時給補てん(時間当たり1,000円)

です。

予防接種や健康診断のことを考えると、早期に育休から復帰しようとする労働者がいる会社ほど、もらえる可能性が高くなります。詳しくは、助成金を取り扱っている社会保険労務士にお問い合わせいただくのも一手です。

 

まとめ

子の看護休暇の時間単位取得は、育休から復帰する労働者を支援する上で、心強い味方です。早めに就業規則に定めて運用するのが望ましいでしょう。しかも、有給の休暇にすれば両立支援等助成金ももらえるかもしれません。今の時代、労働者の子育てと仕事の両立を支援するのは、会社の義務とも言えます。早め早めに法改正に対応して、働きやすい職場を作りましょう。

 

<参考資料>

「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000582033.pdf

「介護休暇・子の看護休暇の時間単位取得について」宮城労働局 雇用環境・均等室

https://jsite.mhlw.go.jp/miyagi-roudoukyoku/content/contents/000618703.pdf

テレワーク/在宅勤務の活用時における注意点とは??

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働き方改革の宣言がなされてから、“テレワーク”という言葉を聞く機会が増えたのではないでしょうか?日本では、1980年代後半~1990年代前半のバブル経済最盛期に一時的に導入企業が増えたものの、課題点が多く、あまり普及せず下火になっていたように思います。

再度注目がされはじめたテレワークについて、労務管理上での注意点に焦点を当ててご紹介します。

テレワークとは

テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information And Communication Technology)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことをいいます。

“テレワークって在宅勤務のことでしょ?”と思う方も少なくはありませんが、在宅勤務はあくまでテレワークの種類の1つのことであり、テレワークは大きく3つの種類に分類されます

  1. 在宅勤務

所属する勤務先から離れて、自宅を就業場所とする働き方

  1. モバイル勤務

移動中の交通機関や顧客先、カフェ、ホテル、空港のラウンジなどを就業場所とする働き方

  1. サテライトオフィス勤務

本拠地のオフィスから離れたところに設置した部門共用オフィスで就業する施設利用型の働き方

労務管理上での注意点

法律に基づいた労務管理は必須

テレワークは、簡単に言ってしまうと働く場所が企業内ではないというだけであり、企業と労働者との関係に変わりはありません。そのため、労働基準法に基づいた労務管理は必須です。

テレワークを行う際にはどのようなことを規定しなくてはならないか、また、導入することで、労務管理上、通常より気を付ける必要があることはなにかについてご紹介します。

  1. 就業規則の整備

テレワークを導入する場合、既存の就業規則にテレワークに関する定めがない場合、就業規則の改訂が必要となります。対象者について、一定の制限(勤続年数や業務遂行レベル等)を行うことも検討しましょう。

  1. 労働条件の明示

雇用する労働者がテレワークの対象となる可能性がある場合や今後対象となる予定がある場合、テレワークを行う就業場所についての明示が必要です。

  1. 労働状況・労働時間の管理

出勤をしている場合は労働者の勤怠管理は比較的容易です。しかし、テレワークの場合、お互い姿が見えない状態で勤務するため、出勤している時に比べると勤怠管理が出勤している時と比較して難しくなります。テレワークを行っている場合も、企業による労働者の労働時間の把握義務は免れず、労働時間の上限ももちろん適用されます。

  • PCの操作ログをもって勤怠を把握
  • クラウド勤怠ソフトでの打刻で労働時間を把握

等、管理方法は様々あるので自社にあった適切な管理方法を検討しましょう。

  1. 人事労務の管理

上述でもあったように、テレワークの場合、お互いの姿が見えないところで業務を行います。そのため、業務の進捗状況の把握についても出勤している時と比較すると難しくなります。残念なことですが、業務の遂行が出勤時よりルーズになることも考えられます。そのようなことを防ぐためには、仕事の見える化をすることが大切といえるでしょう。そのようなことを防ぐためには、業務の見える化のための仕組みづくりはもちろん必要に応じたICTツールの活用をおすすめします。

 

テレワーク時の費用負担について

テレワークを導入・運用する上で必ず出てくる課題点といえます。テレワークのためにかかる費用は原則的には企業側が負担すべきものと考えられていますが、

  • 貸与したPCや周辺機器を私的利用した場合はどうするのか
  • 在宅勤務を行う場合、自宅での水道光熱費やインターネット通信費を業務と業務外でどのように切り分けるか

等をそれぞれ細かく把握・規定することは現実的には難しく、テレワーク手当として定額をまとめて支給している企業が多いのが実情です。手当として支給する際には、手当金額が実費用から大きく乖離しないような金額を設定するべきであることに留意が必要です。

まとめ

バブル最盛期とは異なり環境整備も進んだ昨今、以前の課題点についてはクリアすることが出来る企業が増えてきているように感じます。

しかしながら、働き方に関する考え方や規制等も以前とは大きく異なっていることを踏まえると、労務管理面で求められることについての対応をどのようにしていくかなど、以前とは異なる課題点も多くあげられます。テレワークの導入を考えている企業やテレワークを導入してはいるけれど管理面で不安があるという企業の方は、一度、社会保険労務士に相談をしてみてくださいね。また、テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインが厚生労働省から公表されているので、そちらを確認することもお勧めします。

 

参考:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html

社労士事務所の顧問業務とは? - 顧問契約する場合の簡単な流れをご紹介します!

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今回は、社労士事務所での会社顧問契約をした場合の一般的な流れについてご紹介したいと思います。

 

大まかな流れは以下の通りです。

①給与計算が完了したら結果をご提出していただきます。

※給与計算を代行することも可能です。

②入力いただいた給与データをチェックし、社会保険の加入や脱退、月額変更対象者がいないかのチェックを実施します。

③必要に応じて年金事務所やハローワークへ必要な手続きを行います。

④経営者の方と面談します。

※面談を通して、人事労務に関するご相談や労務管理についてのご相談を承ります。

 

基本的に①から④の繰り返しです。会社により多少の変動はありますが、概ね上記の流れが一般的になります。

 

また臨時業務として、以下のような業務があります。

 

①労働保険の年度更新

②算定基礎届
③労働災害、通勤災害における申請や給付に関する手続き
④社会保険や労働保険料の加入と脱退、給付関係手続き、年度更新に伴う諸手続き

など

 

このような、会社に所属する従業員に関連して発生する手続きを代行するのが社会保険労務士事務所です。

 

弊所の場合は、お客様とのやりとりについて、Chatworkとクラウドシステムを使用していますので、入社や退社処理がスピーディーに完了しますよ。

go.chatwork.com

 

従業員数が10名を超えてきたら、一度社会保険労務士までご相談いただくと良いかもしれません。

 

入社や退社に関連する手続きが面倒・・・といったお悩みがあれば、一度弊所までご相談くださいね。

1年の中で繁閑の差が激しいとき! 1年単位の変形労働時間制の導入の流れ

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1年単位の変形労働時間制とは?

1年単位の変形労働時間制とは、1ヶ月を超え1年以内の一定期間を平均した時に1週間当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件として、特定の日の労働時間が8時間を超えることや、特定された週の労働時間が40時間を超えることが可能になる制度です。

 

1年単位の変形労働時間制導入の要件

1年単位の変形労働時間制を導入するにあたっては労使協定にて下記の事項を定め、所轄労働基準監督署長への届出をする必要があります。

 

  1. 対象労働者の範囲

どのような労働者を対象とするかの範囲を明確にしておく必要があります。対象期間の途中で採用された労働者や退職が予定される労働者も対象とする事が可能です。

  1. 対象期間及び起算日

1年単位の変形労働時間制を行う期間の事を“対象期間”と呼びます。

対象期間の起算日を明らかにする必要があり、対象期間は1ヶ月を超え1年以内の期間に限ります。対象期間を3ヶ月や半年として導入することも可能です。

対象期間が3ヶ月を超える場合には労働日数の限度は原則として1年あたり280日以内にしなくてはなりません。(対象期間が3ヶ月以内の場合は労働日数の限度はありません)また、対象期間における連続労働日数は、特定期間を除き、最長6日と定められています。

  1. 特定期間

対象期間の中で特に業務が繁忙な期間の事を“特定期間”と呼びます。

特定期間は必ずしも定める必要はありません。定めた場合の期間の限度もありませんが、対象期間中の相当部分を特定期間とすることはできません。

特定期間を定めた場合、特定期間については連続労働日数を12日(1週間に1日の休日が確保できる日数)とすることが可能です。

  1. 労働日及び労働日ごとの労働時間

対象期間の労働日及び各日、各週の所定労働時間を定める必要があります。その際には、対象期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えないように定めなくてはなりません。労働時間の特例が認められる業種の場合であっても、40時間を超えないように定める必要があります。

しかし、対象期間が1ヶ月を超える場合、最初に対象期間のすべての労働日等を定めるのは難しいことが考えられます。その場合には、対象期間を1ヶ月以上の期間に区分して、労使協定では最初の期間における労働日と労働日ごとの所定労働時間を定め、それ以外の期間については、各期間の労働日数及び総労働時間を定めればよいこととなっています。

この場合、各期間が開始する少なくとも30日前に、労働者の過半数代表者等の同意を得て、労働日と労働日ごとの所定労働時間を定めなくてはなりません。

また、特定した労働日または労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできないので注意しましょう。

  1. 労使協定の有効期間

労使協定そのものの有効期間は対象期間よりも⻑期間とする必要があります。しかし、1年単位の変形労働時間制を適切に運⽤することを考えると、有効期間は対象期間と同程度とすることが望ましいでしょう。労使協定が同時に労働協約である場合には、有効期間を定める必要はありません。

 

1年単位の変形労働時間制を導入する場合、1日については10時間、1週間については52時間という労働時間の限度が定められています。対象期間が3ヶ月を超える場合には別途制限が加えられるので、労働時間の設定の際には注意が必要です。また、実際に労働者を1年単位の変形労働時間制のもとで労働させるには、労働契約・就業規則・労働協約のいずれかで根拠を示す必要があることも覚えておきましょう。

 

1年単位の変形労働時間制での割増賃金について

通常であれば、1日については8時間を超えた場合、1週間については40時間を超えた場合に時間外労働とされ割増賃金の支払いが必要となりますが、1年単位の変形労働時間制を導入している場合は3つの枠組みで考える必要があります。

 

  1. 1日の法定時間外労働について

              ・労使協定で1日8時間を超える時間を定めた日

               →その時間を超えたら時間外労働

              ・それ以外の日

               →8時間を超えたら時間外労働

 

  1. 1週間の法定時間外労働について

              ・労使協定で1週40時間を超える時間を定めた週

               →その時間を超えたら時間外労働

              ・それ以外の週

               →40時間を超えたら時間外労働

             

  1. 対象期間の法定時間外労働

              対象期間の法定労働時間総枠を超えたら時間外労働

 

2の計算の際には1で計算した時間数は除き、3の計算の際には1及び2で計算した時間数は除いて計算を行いましょう。

 

対象期間の途中で採用された労働者や対象期間の途中で退職した労働者に対しては、実際に労働した期間を平均して週40時間を超えた労働時間について割増賃金の支払いが必要となることに注意が必要です。

まとめ

1年単位の変形労働時間制は、1年のうちで季節によって繁忙期と閑散期がある業種やGWやお盆休み・年末年始などの休みに業務が忙しくなる業種に向いている制度といえるでしょう。百貨店での導入が代表的ですが、製造業や建設業でも多く導入がされています。

1ヶ月単位の変形労働時間制と類似した制度ですが、期間を長く設定できることから様々な制約が課せられているのが特徴です。“どのような制約があるの?” “自社に向いているのは1年単位の変形労働時間制?それとも1ヶ月単位の変形労働時間制?”等のご質問ご相談は、社会保険労務士までお気軽にお問い合わせください。

シフト制を導入したい!1ヶ月単位の変形労働時間制の導入について

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1ヶ月単位の変形労働時間制とは?

1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以内の期間を平均した時に1週間当たりの労働時間が法定労働時間内となることを条件として、特定の日の労働時間が8時間を超えることや特定された週の労働時間が週法定労働時間を超えることが可能になる制度です。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制導入の要件

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入するにあたっては①労使協定②就業規則③その他これに準ずるもののいずれかにおいて下記の記載事項を定めます。①②の場合には所轄労働基準監督署長への届出が必要です。③は就業規則の作成義務のない会社(労働者数が常時10人未満の会社)が作成する就業規則に準ずるものを指し、③の場合には所轄労働基準監督署長への届出は不要です。

 

  1. 対象となる労働者の範囲

どのような労働者を対象とするかの範囲を明確にしておく必要があります。

  1. 変形期間

1ヶ月単位の変形労働時間制を行う期間の事を“変形期間”と呼びます。

変形期間は1ヶ月以内の期間に限られ、変形期間の起算日を明らかにする必要があります。

  1. 変形期間を平均し、1週間当たりの労働時間が1週間の法定労働時間を超えない定め
  2. 変形期間における各日及び各週の具体的な労働時間

シフト表・会社カレンダーなどで、変形期間のすべての労働日ごとの労働時間及び休日をあらかじめ具体的に定める必要があります。その際には、変形期間を平均して1週間あたりの労働時間が週法定労働時間の範囲内となるように定めなくてはなりません。労働時間の特例が認められる業種の場合は、1週間の法定労働時間は44時間として計算します。

1ヶ月の変形労働時間制で勤務ができる月の労働時間の上限は”1週間の法定労働時間×変形期間の歴日数(1ヶ月以内)÷7日”で求められ、下記のとおりとなります。

 

歴日数が28日:160時間(176時間)

歴日数が29日:165.7時間(182.2時間)

歴日数が30日:171.4時間(188.5時間)

歴日数が31日:177.1時間(194.8時間)

※()内の数字は労働時間の特例が認められる業種の場合の労働時間の上限      

※小数点2位以下は切捨

 

変形期間中の労働時間の合計が変形期間の定めの通りであったとしても、特定した労働日または労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできないので注意しましょう。

  1. 労使協定によって導入する場合には、有効期間

労使協定そのものの有効期間は変形期間よりも⻑期間とする必要があります。しかし、1ヶ月単位の変形労働時間制を適切に運⽤することを考えると、有効期間は3年以内程度とすることが望ましいでしょう。労使協定が同時に労働協約である場合には、有効期間を定める必要はありません。

労使協定によって1ヶ月単位の変形労働時間制を導入する場合、実際に労働者を1ヶ月単位の変形労働時間制のもとで労働させるには、労働契約・就業規則・労働協約のいずれかで根拠を示す必要があることにも注意が必要です。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制での割増賃金について

通常であれば、1日については8時間を超えた場合、1週間については40時間を超えた場合に時間外労働とされ割増賃金の支払いが必要となりますが、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入している場合は3つの枠組みで考える必要があります。

 

  1. 1日の法定時間外労働について

              ・労使協定又は就業規則等で1日8時間を超える時間を定めた日

               →その時間を超えたら時間外労働

              ・それ以外の日

               →8時間を超えたら時間外労働

 

  1. 1週間の法定時間外労働について

              ・労使協定又は就業規則等で1週40時間(44時間)を超える時間を定めた週

               →その時間を超えたら時間外労働

              ・それ以外の週

               →40時間(44時間)を超えたら時間外労働

             

  1. 1ヶ月単位の法定時間外労働

              変形期間の法定労働時間総枠を超えたら時間外労働

 

2の計算の際には1で計算した時間数は除き、3の計算の際には1及び2で計算した時間数は除いて計算を行いましょう。

まとめ

1ヶ月単位の変形労働時間制は1ヶ月内である程度の繁閑が明確である飲食業、コンビ二や学習塾・クリニックなど1ヶ月単位でシフトを組む業種に向いている制度といえるでしょう。

1ヶ月間全体で法定労働時間以内に収めれば良く、労働時間の調整がしやすくなり結果的に労働時間の削減につながるなどの効果が期待できますが、前述したとおり時間外労働の計算は通常よりも煩雑になるため、通常以上に労働者の労働時間の把握を意識する必要があります。自社にとって導入するべきかどうかを考える際には、そのあたりを考慮して判断することが大切です。制度を導入するべきか、制度を導入することに決めたものの労働時間の管理はどのようにしていくべきか等お悩みの際には、社会保険労務士までお気軽にお問い合わせください。

フレックスタイム制とは?うちの会社でも導入できるの?

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フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは、労働者が一定の期間において一定の時間働くことを条件として、始業及び就業の時刻を自らで決めることのできる制度です。働き方改革の一環として注目され、近年、導入する企業が増えてきています。

フレックスタイム制導入の要件

フレックスタイム制を導入するにあたっては、就業規則に始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねることを定めるとともに、労使協定で以下の事項を定める必要があります。労使協定については、清算期間が1か月以内であれば届出は不要です。清算期間が1か月を超える場合には届出が必要となることを覚えておきましょう。

 

  1. 対象となる労働者の範囲

全労働者を対象とする必要はなく、特定の部署などに範囲を限ることも可能です

  1. 清算期間とその起算日

清算期間の最長は3か月であり、それ以上の期間の設定はできません。

  1. 清算期間における総労働時間数

清算期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内となるように定めなくてはなりません。労働時間の特例が認められる業種の場合は、1週間の法定労働時間は44時間として計算します。

  1. 標準となる1日の労働時間

有給休暇を取得した際に⽀払われる賃⾦の算定基礎となる労働時間です。清算期間における総労働時間を期間中の所定労働⽇数で割った時間を基準として定めます。

  1. コアタイム・フレキシブルタイムを定める場合にはその開始時刻及び終了時刻

コアタイム:1日の中で必ず働かなくてはならない時間帯

フレキシブルタイム:労働者がその選択で働くことができる時間帯

コアタイム・フレキシブルタイムは必ず定めなくてはならないものではありませんが、どちらも定めないとなると労働者は24時間のうちいつでも好きな時間帯に働いていいということになります。例えば労働者が深夜に働いた場合、それが労働者の選択であったとしても深夜の割増賃金の支払いをしなくてはなりません。24時間いつでも勤務可能になることで各労働者の勤務時間帯がバラバラになり労働者間での情報共有に問題点が出てくることも考えられます。そのような事を防ぐために、コアタイムやフレキシブルタイムを設定することが望ましいといえます。

コアタイム・フレキシブルタイムともに、時間帯を自由に定めることが可能です。” 毎週月曜日の9時から10時は全体朝礼があるので必ず勤務してほしいけど、それ以外は自由にしてもらって構わない” という場合には、月曜日の9時から10時のみコアタイムとすることもできるので、自社の環境に合わせた設定を行いましょう。

しかし、コアタイムの時間が1⽇の労働時間とほぼ同じである場合やフレキシブルタイムの時間帯が極端に短い場合などは労働者が始業・終業時刻を自由に決定できることにはならず、フレックスタイム制とはいえなくなるためその点には注意が必要です。

 

フレックスタイム制での労働と賃金について

“始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる=労働時間の管理が不要になる“と考える方が少なくありませんが、そうではありません。フレックスタイム制を導入していても、実労働時間の把握を行い、適切な労働時間管理を行う必要があります。実労働時間数が清算期間の総労働時間数を超えた場合や実労働時間数が清算期間の総労働時間数に満たない場合の賃金の取り扱いにも注意が必要です。下記に賃金の取り扱いについての具体例をあげておきます。

 

例1:総労働時間数160時間 実労働時間数180時間

超過分を翌月以降の労働時間で調整することは賃金の全額払いの原則に違反する為、

出来ません。超過した20時間分の割増賃金の支払いが必要です。

例2:総労働時間数160時間 実労働時間数150時間

  • 10時間の不足時間分の賃金を控除
  • 10時間の不足時間分を繰り越して、次の清算期間の総労働時間数に合算

法律上は①②のいずれかで対応することが可能です。しかし、②の場合には加算後の総労働時間数が法定労働時間範囲内であることが求められるため、実務上は①で対応することがほとんどといえるでしょう。

 

フレックスタイム制では1日の労働時間を労働者に委ねていることから、1日の労働時間が法定労働時間を超えて労働しても、それをもってただちに時間外労働ということにはなりません。清算期間の総労働時間数を超えたときにはじめて時間外労働となるということを覚えておきましょう。

まとめ

フレックスタイム制はワークライフバランスがとりやすくなることで労働者にとってはメリットが大きい制度といえるでしょう。ワークライフバランスがとれることで仕事の生産性もあがれば、企業にとってもメリットとなります。しかし、労働者間でのコミュニケーションが導入前に比べて難しくなること、タイムマネジメントが出来ない労働者の場合はズルズルと働いてしまい結果的に長時間労働を助長してしまうなどのデメリットも考えられます。

導入を検討する際には、フレックスタイム制を導入することで自社にどのようなメリットがあり、どのようなデメリットが起きる可能性があるか?をしっかりと把握し、決定することが大切です。