障害者雇用促進法は障害者の職業の安定を図ることを目的とし、障害者雇用対策の一環として、事業主に対して障害者雇用率(以下、法定雇用率)に相当する人数の障害者雇用を義務づけています。障害者雇用は企業にとって法的義務となりますが、
・自社では何人雇用したらいいの?
・どのような障害の人でも対象になるの?
といった疑問が出てくるのではないでしょうか。
そこで、今回はどのような障害の人が対象となるか、どのように雇用義務人数の計算をするのか等についてご紹介します。
目次
障害者の定義
身体障害者、知的障害者、精神障害者のいずれも対象です。(2018年4月以前は精神障害者については対象外とされていましたが、法改正により対象に加わりました。)
しかし、上記に当てはまる全員が対象となるわけではありません。身体障害者の場合には「身体障害者手帳」を所持していること、知的障害者の場合には「療育手帳」を所持していること、精神障害者の場合には「精神障害者保険福祉手帳」を所持していることなどの要件を満たす必要があります。
雇用義務人数の計算
事業主の雇用義務人数は下記計算式にて求めます。
雇用義務人数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×法定雇用率
計算例:民間企業で常用労働者数50人の場合
50人×法定雇用率(2.3%)=1.15人
小数点以下の端数は切り捨てる為、雇用義務人数は1人
しかし、業種によっては障害者雇用が難しい場合もあります。そのため、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種(除外率設定業種)について、雇用義務人数の計算時に一定率を除外することが可能です。その場合は下記計算式にて計算を行います。(※1)
雇用義務人数=((常用労働者数+短時間労働者数×0.5)-
((常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×除外率))×法定雇用率
計算例:民間企業で常用労働者数200人、除外率50%の場合
(200-(200×50%))×法定雇用率(2.3%)=2.3人
小数点以下の端数は切り捨てる為、雇用義務人数は2人
法定雇用率
法定雇用率は、労働者の総数に対する対象となる障害者である労働者の総数の割合を基準として少なくとも5年に一度見直されます。令和3年3月1日以降の法定雇用率は下記のとおりです。
民間企業:2.3%
国、地方公共団体:2.6%
都道府県等の教育委員会:2.5%
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/000694645.pdf
この法定雇用率に当てはめると、民間企業では43.5人以上の場合に障害者雇用の義務があるということになります。
雇用義務人数のカウントについて
【原則】
・常時雇用労働者1人で1人分 ・短時間労働者1人で0.5人分
【例外】
- 重度身体障害者(※3)
・常用労働者1人で2人分 ・短時間労働者は1人で1人分
- 重度知的障害者(※4)
・常用労働者1人で2人分 ・短時間労働者は1人で1人分
- 精神障害者
・下記要件を満たす短時間労働者は1人で1人分(※2)
- 新規雇い入れから3年以内、又は精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内
- 2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保険福祉手帳を取得
|
常用労働者 |
短時間労働者 |
身体障害者 |
1人 |
0.5人 |
重度身体障害者 |
2人 |
1人 |
知的障害者 |
1人 |
0.5人 |
重度知的障害者 |
2人 |
1人 |
精神障害者 |
1人 |
0.5人(上記②の場合、1人) |
まとめ
障害がある人の雇用人数が法定雇用率による計算結果に満たない場合、一定規模以上の事業主は障害者雇用納付金を納める必要がでてきます。逆に、障害がある人の雇用人数が法定雇用率による計算結果以上の場合、調整金や報奨金が支給されます。(※5)
まずは自社での雇用義務人数の把握をし、雇用義務達成のためにはどのように進めていくのが良いかを考えていきましょう。
※1 段階的に除外率の引き下げ及び縮小を行っており、最終的には廃止される予定
参考:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/4-1-2_5.pdf
※2 2023年までの特例措置
※3 重度身体障害者とは障害等級の1級または2級に該当する人、3級に該当する障害を2つ以上重複していることで2級とされる人を指す
※4 重度知的障害者とは知的障害者判定機関によって知的障害者の程度が重いと判断される人を指す
※5 参考:https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html