みなさん、こんにちは。トライアンフの榊原です。新年度がスタートしましたね。4月は、新しい人材が多く入社してくる時期ですが、大きく生活スタイルが変化する中で、その変化についていけなかったり、入社してみたものの「イメージしていた職場と違った」「希望した部署へ配属されなかった」「先輩とうまくいかなかった」「人間関係が辛い」など様々な理由から、退職してしまう方も多くいらっしゃいます。SNSをみていると、入社してからわずかな期間で退職してしまったという投稿もちらほら・・・。会社としても、退職した方にとっても、本当に残念なことですよね。こういったミスマッチをなくすことも、私たち社会保険労務士の仕事ではないのかと思うところです。
そこで今回は、入社した方がすぐに退職してしまった場合の社会保険について、会社の手続きを中心に書いていきたいと思います。
そもそも社会保険とは?
社会保険とは、社会保険とは、病気やケガ、収入の保障など、万が一の事故に備えるために運営されている公的な保険制度で、複数の制度や運営団体で構成されている制度です。社会保険についてすべて触れてしまうと非常に範囲が広いため、今回のテーマで必要な以下の4制度に絞って説明したいと思います。
健康保険
業務外の病気・怪我、出産などで医療機関を受診する場合に、受診料の自己負担額が7割が給付される制度です。その他、出産手当金や傷病手当金といった収入を保証する給付も健康保険制度には用意されています。主にサラリーマンの方が加入する健康保険には扶養制度があり、健康保険に加入している方(被保険者といいます。)のご家族なども要件を満たせば、被保険者の健康保険
厚生年金保険
一定年齢以上になった際に年金として給付が受けられる公的年金制度です。主にサラリーマンの方が加入する厚生年金保険のほか、自営業や無職の方は、国民年金制度に加入します。
雇用保険
雇用保険は、主に労働者に対して、失業して給料が得られなくなった場合や育児休業を取得した場合の給付を行う公的保険制度です。また保険料は、それ以外にも労働者のキャリアを支援や、就職を促進、就業環境を改善するための助成金制度を運営するための財源にも利用されています。
国民健康保険
国民健康保険制度(国保)は、他の医療保険制度(会社の健康保険や後期高齢者医療制度)に加入されていない全ての方を対象とした医療保険制度で、都道府県及び市町村(特別区を含む)が運営する市町村国保のほか、建設業や美容師などの業種ごとに運営される国民健康保険組合があります。
社会保険の加入手続きと社会保険料の給与天引き
正社員として従業員を採用した場合の社会保険手続きは、雇用保険の加入要件を満たす場合には、原則として入社した日の属する月の翌月 10 日までに。健康保険や厚生年金の加入要件を満たす場合には、入社した日から 5 日以内に加入手続きを行う必要があります。加入要件の詳細については割愛しますが、入社時点で加入要件を満たす場合には、例え試用期間や研修期間であっても加入手続きを行う必要があります。なお社会保険料は、原則として翌月に支給される給与から天引きします。
正社員として入社してすぐに退職してしまった場合の社会保険の天引き
では、入社した従業員が、すぐに退職してしまった場合はどうなるのでしょうか?
ここでは、以下の条件を前提に説明していきたいと思います。
・入社日 4月1日
・退職日 4月15日
・退職後に国民健康保険と国民年金に加入
・給与計算:末締め、翌月15日払
健康保険
健康保険や厚生年金の加入は歴月単位で考えます。そしてその月内に複数の制度(会社の健康保険と国保など)に加入する場合には、一番最後に加入した制度がその月の資格となります。例えば、会社の健康保険の資格を喪失し、翌日に国民健康保険に加入した場合には、4月中に加入している資格は国民健康保険となります。通常であれば資格喪失月は保険料の納付は原則として発生しませんが、加入月と資格喪失月が同じ場合(これを同月得喪といいます。)には保険料が発生します。そのため、5月15日に支給される給与では、健康保険料を徴収する必要があります。
この場合、保険料は両制度ともに発生しますので、忘れずに天引きする必要がありますが、給与支給額が少ないなどの場合には、事前に説明したうえで本人負担分の社会保険料を振り込んでもらうなどの対応が必要です。
厚生年金
厚生年金も健康保険と考え方は同じですので、5月15日に支給される給与では、厚生年金保険料を徴収する必要があります。ただし、健康保険と異なり、同月得喪の場合でも厚生年金保険料は発生しません。そのため、後日年金事務所から納めた保険料が還付のされますので、還付があった場合には、退職した従業員に保険料を返金することを忘れないようにしなければなりません。
雇用保険
雇用保険は4月1日から4月15日までに発生した給与に対して保険料率を乗じて計算した保険料を5月15日払いの給与支給時に天引きすることとなります。この場合には、失業保険などの受給資格として必要な「被保険者期間1ヶ月」と計算されます。わずかな期間ですが、被保険者期間としてカウントできる反面、雇用保険の履歴が発生します。
退職後に会社の保険証を使用した場合
退職後に会社の保険証を使った場合にはどうなるのでしょうか?
今回のケースでは4月15日までは会社の健康保険証を利用することができます。4月16日からは国民健康保険の保険証を使用することになりますが、誤って4月16日以降も会社の保険証を使用してしまった場合には、後日、会社の健康保険から費用請求されます。ただし、その費用については国民健康保険から支給されるため、その請求手続きが必要になります。退職後に会社の保険証は使用できませんので、退職時にしっかりと回収しておきましょう。