1ヶ月単位の変形労働時間制とは?
1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以内の期間を平均した時に1週間当たりの労働時間が法定労働時間内となることを条件として、特定の日の労働時間が8時間を超えることや特定された週の労働時間が週法定労働時間を超えることが可能になる制度です。
1ヶ月単位の変形労働時間制導入の要件
1ヶ月単位の変形労働時間制を導入するにあたっては①労使協定②就業規則③その他これに準ずるもののいずれかにおいて下記の記載事項を定めます。①②の場合には所轄労働基準監督署長への届出が必要です。③は就業規則の作成義務のない会社(労働者数が常時10人未満の会社)が作成する就業規則に準ずるものを指し、③の場合には所轄労働基準監督署長への届出は不要です。
- 対象となる労働者の範囲
どのような労働者を対象とするかの範囲を明確にしておく必要があります。
- 変形期間
1ヶ月単位の変形労働時間制を行う期間の事を“変形期間”と呼びます。
変形期間は1ヶ月以内の期間に限られ、変形期間の起算日を明らかにする必要があります。
- 変形期間を平均し、1週間当たりの労働時間が1週間の法定労働時間を超えない定め
- 変形期間における各日及び各週の具体的な労働時間
シフト表・会社カレンダーなどで、変形期間のすべての労働日ごとの労働時間及び休日をあらかじめ具体的に定める必要があります。その際には、変形期間を平均して1週間あたりの労働時間が週法定労働時間の範囲内となるように定めなくてはなりません。労働時間の特例が認められる業種の場合は、1週間の法定労働時間は44時間として計算します。
1ヶ月の変形労働時間制で勤務ができる月の労働時間の上限は”1週間の法定労働時間×変形期間の歴日数(1ヶ月以内)÷7日”で求められ、下記のとおりとなります。
歴日数が28日:160時間(176時間)
歴日数が29日:165.7時間(182.2時間)
歴日数が30日:171.4時間(188.5時間)
歴日数が31日:177.1時間(194.8時間)
※()内の数字は労働時間の特例が認められる業種の場合の労働時間の上限
※小数点2位以下は切捨
変形期間中の労働時間の合計が変形期間の定めの通りであったとしても、特定した労働日または労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできないので注意しましょう。
- 労使協定によって導入する場合には、有効期間
労使協定そのものの有効期間は変形期間よりも⻑期間とする必要があります。しかし、1ヶ月単位の変形労働時間制を適切に運⽤することを考えると、有効期間は3年以内程度とすることが望ましいでしょう。労使協定が同時に労働協約である場合には、有効期間を定める必要はありません。
労使協定によって1ヶ月単位の変形労働時間制を導入する場合、実際に労働者を1ヶ月単位の変形労働時間制のもとで労働させるには、労働契約・就業規則・労働協約のいずれかで根拠を示す必要があることにも注意が必要です。
1ヶ月単位の変形労働時間制での割増賃金について
通常であれば、1日については8時間を超えた場合、1週間については40時間を超えた場合に時間外労働とされ割増賃金の支払いが必要となりますが、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入している場合は3つの枠組みで考える必要があります。
- 1日の法定時間外労働について
・労使協定又は就業規則等で1日8時間を超える時間を定めた日
→その時間を超えたら時間外労働
・それ以外の日
→8時間を超えたら時間外労働
- 1週間の法定時間外労働について
・労使協定又は就業規則等で1週40時間(44時間)を超える時間を定めた週
→その時間を超えたら時間外労働
・それ以外の週
→40時間(44時間)を超えたら時間外労働
- 1ヶ月単位の法定時間外労働
変形期間の法定労働時間総枠を超えたら時間外労働
2の計算の際には1で計算した時間数は除き、3の計算の際には1及び2で計算した時間数は除いて計算を行いましょう。
まとめ
1ヶ月単位の変形労働時間制は1ヶ月内である程度の繁閑が明確である飲食業、コンビ二や学習塾・クリニックなど1ヶ月単位でシフトを組む業種に向いている制度といえるでしょう。
1ヶ月間全体で法定労働時間以内に収めれば良く、労働時間の調整がしやすくなり結果的に労働時間の削減につながるなどの効果が期待できますが、前述したとおり時間外労働の計算は通常よりも煩雑になるため、通常以上に労働者の労働時間の把握を意識する必要があります。自社にとって導入するべきかどうかを考える際には、そのあたりを考慮して判断することが大切です。制度を導入するべきか、制度を導入することに決めたものの労働時間の管理はどのようにしていくべきか等お悩みの際には、社会保険労務士までお気軽にお問い合わせください。